全国肉用牛経営者会議

会長からのご挨拶

全国肉用牛経営者会議 会長 佐古 保

1.農業をめぐる情勢

2018年末に環太平洋連携協定(TPP)、2019年2月には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の大型通商協定が相次いで発効しました。牛肉については、TPPと同様に関税(現行38.5%)を16年目に9%まで引き下げ、輸入が一定量を超えたら関税を引き上げる緊急輸入制限措置(セーフガード)が設けられています。

欧州産牛肉の輸入急増は見込みにくいといわれますが、TPPと同水準の合意内容としたことで、離脱で関税削減の恩恵を受けられない米国には、市場開放を求めるきっかけを与えるとの指摘もあります。 一定の譲歩を余儀なくされた農業経営者の不安は大きく、再生産を確保するための徹底した国内対策が必要です。

2.畜産経営をめぐる情勢

畜産は、生産コストの高止まりにより経営の継続が厳しさを増し、高齢化が進展するなかで、労働負荷の増大や離農の増加、後継者不足による経営の中止などによって、生産基盤の縮小に歯止めがかからない状況になっています。

産地では、所得の増大・生産の拡大に向け、新技術の活用や効率的な飼養管理方法による生産性の向上、直売所における精肉販売の展開等による販売力の強化、畜産経営継承支援を活用した生産基盤の維持・拡大などに取り組んでいます。

今後も、国産畜産物を安定的に供給し、競争力のある持続的な畜産経営を実現するためには、政府による経営者の取り組みの後押しや、経営者が将来を展望し、計画的な取り組みを進めることができる環境づくりが必要です。

3.全国肉用牛経営者会議の活動

自主的な経営者組織である全国肉用牛経営者会議は発足して24年となり、会員も畜産県の経営者が中心となって活動を展開しています。

これまで、畜舎・堆肥舎の建築にかかる建築基準の緩和、牛海綿状脳症(BSE)発生における緊急対策、東日本大震災での原子力発電所事故による放射性物質検出に起因した出荷制限や風評被害防止等の要請活動を展開してきました。 毎年度、農林水産補正予算、次年度の農林水産関係予算ならびに税制改正にあたっては、政府与党の会議の場で、(一社)全国農業会議所と連携して政策提言を行っています。

さらに、規模拡大だけでなく、中小・家族農業などの役割と価値を評価すべきとの観点から、中小肉用牛経営の強化に向け、地域内での経営継承や後継牛確保を支援する対策を要請し、実現を見ました。離脱した農家の施設を新規就農者らに継承しやすい仕組みづくりや協業化などの取り組み、地域内で持続的に後継牛を確保する体制づくりなどを支援するといったものです。 また、家畜排せつ物処理設備では、家畜排せつ物法の本格実施に向けて整備した施設が、各地で老朽化していることを踏まえ、施設のリース支援に向けた貸付枠の拡大も実現にこぎつけました。

加えて、和牛受精卵が日本の検疫をすり抜けて中国に持ち出されたことを受け、和牛精液や受精卵の流通管理について、知的財産保護の観点から、利用許諾契約の検証なども必要になっています。畜産農家の農場の所在地や精液と受精卵の購入元を届け出るようにルール化し、生産・流通・利用の透明化を進め、貴重な和牛遺伝資源保護に本腰を入れる必要があります。

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