全国肉用牛経営者会議

平成29年11月 栃木県で全国肉用牛経営者会議現地研究会を開催

2017月12月05日

栃木県那須町で全国肉用牛経営者会議が平成29年度現地研究会ひら

 全国肉用牛経営者会議(佐古保会長)は、平成29年11月28日~29日、栃木県肉用牛経営者会議(長谷川良光会長)と合同で栃木県那須町で平成29年度現地研究会を開き、組織・個人会員らが参加した。28日にはホテルで開かれた「第30回とちぎの和牛を考える会」(齋藤倉和会長)に参加し講演を聞いた後、全国肉用牛経営者会議主催の室内研修を開いた。室内研修では栃木県畜産振興課担当官から「栃木県内の肉用牛情勢について」と題した説明を聞いた。29日は視察研修として那須町の肉用牛経営者・角田正雄さんの農場、栃木県畜産酪農研究センターの牧場や施設等を見学し、説明を聞いた後に意見を交換した。

 組織・個人会員らは「第30回とちぎの和牛を考える会」に出席し、講演を聞いた。

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講師=(有)徳重和牛人工授精所の徳重真生氏
    鹿児島県さつま町にある(有)徳重和牛人工授精所の徳重真生社長からは「徳重和牛人工授精所の軌跡」と題した話を聞いた。
    徳重さんは、種雄牛25頭、繁殖牛180頭、肥育牛1,000頭を飼養する。父親が和牛繁殖牛5頭からスタートし、「平茂勝」、「勝忠平」、「百合茂」「安福久」、「美国桜」、「幸紀雄」、「涼太郎」などが次々と誕生し、取り扱っている。種雄牛の導入・選抜については「平茂勝」販売後、全国の畜産関係者から引き合いがあり、候補種雄牛の精液は主に地元肥育牛経営者に協力してもらい、人工授精をしている。また、候補牛1頭に対して、60頭程度の肥育成績が得られるように心がけているという。係留種雄牛は約25頭で、成績の出ない牛は6~7歳を目途に入れ替えている。体型や大きさなどの外見的な因子は種雄牛と母牛の長所・短所を見定め、子出しの特徴を推察しながら、交配を進めている。肉質については、母牛との相性や三代祖をみて、交配している。
    【アドバイス】

「平茂勝」=産子の特徴として体型的に非常に優れ、性格は温厚で哺育も上手。産肉成績も非常に良く、質量兼備の画期的な牛。「安福久」=産子は田尻系としては発育が良い。枝肉成績は、特に雌の肥育成績がずば抜けて良い。母体としては全国で利用され、各種枝肉共励会で活躍している。繁殖素牛として利用する時、分娩間隔が長い傾向があるので注意が必要。「百合茂」、「勝忠平」等の増体系との高配が望ましい。
 

講師=エランコジャパン(株)の松井一浩氏
    エランコジャパン(株)ビジネスアライアンス部マネージャーの松井一浩氏からは「モネンシンの効果・安全性について」と題した話を聞いた。
    モネンシンは、世界の多くの国々で活用されている抗菌性飼料添加物。肉用牛生産におけるモネンシンの活用に関しては、様々な見解や評価がある。このため、使用の是非が問われているが、肉用牛生産でのモネンシンの効果は飼料効率の改善だという。同時に、消化機能の健全性の支援・維持にも貢献することが報告されている。
    モネンシンは成長ホルモン剤等とは異なり、牛の体に直接作用することはなく、牛の第一胃のルーメン内微生物に作用することで効果を発揮するという。摂取されたモネンシンは体内に吸収されず、ルーメン内ならびに消化管内だけで作用し、ほぼ全量がふん便中に排せつされる。このため、残留性は低く、肥育牛への使用では休薬期間ゼロ日が確認されており、出荷直前までの使用が可能との紹介があった。
    日本では法律によって、飼料添加による給与が義務付けられていて、その濃度は30ppm(飼料1トン当たりモネンシン30グラム力価)と定められている。一方、諸外国では様々な規制により、その用途や扱い方が日本とは異なる。肉用牛経営にモネンシンが活用できるか否か、判断をしてもらう機会として松井氏は紹介をした。

 

【室内研修】
 全国肉用牛経営者会議主催の室内研修では、佐古会長の主催者あいさつ、長谷川会長の歓迎あいさつの後、栃木県畜産振興課担当官から「栃木県内の肉用牛情勢について」と題した話を聞いた。

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栃木県畜産振興課
    平成29年の栃木県内の肉用牛飼養戸数は925戸。飼養頭数は82,200頭(繁殖雌牛11,500頭、肥育牛19,800頭、育成牛8,170頭)で、その5割が和牛という全国有数の和牛県となっている。黒毛和種牛経営の分布では繁殖は主に県北部、肥育は主に県南部と北部。子牛市場の上場頭数は雌牛が3,485頭、去勢牛プラス雄牛が4,364頭で、販売先は県内が37%を占めている。肥育牛の出荷先は県内が12%、関東が82%となっている。
    栃木県では生産基盤の強化策として、繁殖雌牛の導入支援、優良繁殖雌牛の受精卵活用(県内にある優良繁殖雌牛飼養者から受精卵を買い上げ、県畜産酪農研究センターで高能力雌牛を作出し、選抜した高能力雌牛の受精卵を県内に配布する)、和牛の改良研究会(県内で統一した改良目標を策定している)を開催しているという。

② (一社)全国農業会議所・全国肉用牛経営者会議
  全国の「肉用牛経営をめぐる情勢」等について報告し、意見を交換した。
29日には、栃木県那須町にある肉用牛経営者・角田正雄さんの牧場及び栃木県畜産酪農研究センターを訪ね、話を聞いた後、牧場及び施設等を見学して意見を交換した。

 

【視察研修】
 ①栃木県那須町の角田正雄さんFH000011.JPG
    角田牧場の労働力は、角田正雄さんと奥様の良子さん、長男の充寛さん、従業員の4人。経営規模は肥育牛100頭、繁殖牛30頭、育成牛20頭。素牛の導入については、発育が良く、血統の良さそうな子牛を市場から購入している。自家子牛については、去勢子牛は肥育へ、雌子牛は血統の良さそうな子牛を保留し、それ以外は肥育している。
    肥育牛については、健康管理や給餌量が落ちないように個体ごとの観察に気をつけているという。導入から出荷まで2頭ずつ牛房で肥育し、出荷は32か月でJA系統を通して食肉市場に販売している。
    今後の経営計画では、肥育素牛の高値が続いているので、繁殖雌牛を増頭して導入経費を軽減したいと考えている。JAなすの肥育部会に所属し、研修会や研究会を通じて肥育技術の向上に努め、研究会では上位入賞を目指している。
    平成28年2月、とちぎ和牛第62回なすの肥育牛部会枝肉研究会の最優秀賞を受賞(去勢、枝重548㎏、BMSNO.12、美津百合×安福久×平茂勝)している。

   

【アドバイス】とちぎ和牛は、ブランド品質を維持する3つの明確な認定基準を定めている。1つめは、指定生産者。2つめは、市場価値を決める重要な指標の枝肉格付け等級でA・B4等級以上であること。最上級とされるA5と、それに続くA4・B5・B4のみを「とちぎ和牛」として認定している。3つめは、飼育後期の飼料にお米を加えていること。米を加えることで、食味や風味の向上を目指している。

栃木県畜産酪農研究センター(栃木県那須塩原市)

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  栃木県畜産酪農研究センター肉牛研究室では、肉用牛の繁殖技術向上のためのICT(情報通信技術)を活用した生産性(受胎率)向上技術の開発や肥育効率に優れる素牛の育成技術の開発、牛肉の「おいしさ」に関する要因解明と県産牛の高品質化を図るための試験研究を行っている。また、超音波肉質診断を活用した早期肥育技術の現地技術支援にも取り組んでいる。肉用牛関連施設では、繁殖試験牛舎で繁殖牛50頭、分娩哺育育成牛舎で繁殖牛9頭、子牛25頭、肥育試験牛舎で肥育牛35頭を飼養している。

ICTを活用した繁殖牛の管理(発情発見システム)
    発情発見システムは、発情が来ると牛の歩数がいつもより多くなることを利用して発情を見つけるシステム。牛の足に取り付けた万歩計のデータが受信アンテナを通してパソコンに送られ、発情開始時刻や授精適期などがデータとして画面に表示される。
    県内では、飼養頭数が多く、発情の観察など繁殖管理に十分な時間がとれない畜産経営者での導入が多くなっている。目が届かない夜間から早朝の発情が発見できるため、夏場に多い鈍性発情も含めて、発情の見逃しがほぼ無くなったという。

超音波を利用した肉用牛の肉質診断技術
    超音波を利用して、生きている牛の肉量を測ったり、ロース部にどの程度の脂肪交雑(サシ)があるのかを診断する技術。超音波は、物質の固さが異なる部分で反射する特性がある。これを利用して、物を壊さずに中の様子を観察する技術は、人間のがん治療や妊娠診断等に用いられている。これを牛に応用して、筋肉や脂肪のつくりを観察する。
    牛の肩の後ろの部分に装置(深触子)を当てることで、リブロース部の画像をパソコンで見ることができる。ロース芯の大きさやバラの厚さ等の肉量、ロース芯へのサシの入り具合等を測定する。継続的に測定することで、牛の発育状況を把握できる。
                                                  (全国肉用牛経営者会議ニュース)