全国肉用牛経営者会議

平成28年6月 鹿児島県で全国肉用牛経営者会議現地研究会を開催

2016月06月30日

鹿児島県で全国肉用牛経営者会議現地研究会を開催

 全国肉用牛経営者会議(佐古保会長)は、鹿児島県肉用牛経営者会議(森義之会長)と合同で平成28年6月7日~8日にかけ、鹿児島県内で現地研究会を開催し、組織会員と個人会員ら45人が参加した。7日の室内研修では、事務局の全国農業会議所から「肉用牛をめぐる情勢」について報告があった後、佐古保会長から「循環型農業に取り組む飛騨牛づくり」、中西康一副会長から「島根県の肉用牛の情勢」と題して事例報告が行われた。

【室内研修】

①全国肉用牛経営者会議会長、岐阜県肉用牛経営者会議会長で、室内研修.JPG岐阜県下呂市の佐古保さんは、昭和45年に6頭の肥育牛を新規に導入し、子牛価格が高騰した50年代に繁殖・肥育の一貫経営に転換した。その後は、繁殖雌牛の頭数を拡大し、平成19年には後継者が就農し、平成22年に株式会社化。現在は、繁殖雌牛95頭、肥育牛119頭を飼養し、年間63頭の肥育牛を出荷している。優秀な繁殖雌牛群の確保により、「福光王」(ふくみつおう)、「姫水晶」(ひめすいしょう)をはじめとした種雄牛生産につなげている。

 また、粗飼料は品質にこだわり、自給飼料は水田や畑地でデントコーンとソルガムを6.9ヘクタールで混植栽培し、自走式細断型ロールベーラーでサイレージに調製、繁殖牛に与えている。平成23年には「下呂市飼料用米利用組合」(市内の肉用牛農家と養豚農家や養鶏農家、水稲農家で構成)を設立し、その飼料用米を給与している。これらにより繁殖牛の飼料自給率は59%と県平均を大きく上回っている。
 飼料生産圃は、シカやイノシシが出る中山間地にあり、面積も狭く、離れていることから、それぞれに電気柵を設置しているほか、毎日見回るなどの獣害対策に目を光らせる。
 飼料用米を使ってみて、枝肉の品質・重量ともに好成績を維持している。今後は「肥育牛への飼料給与割合を増やしていきたい」という。
 佐古さんは、「地域づくり」、「人づくり」にも熱心に取り組んでおり、県指導農業士として県内外に数多くの畜産後継者を育成している。さらに地元では、中学生の職場体験の受け入れや、小学生の総合学習での社会科授業の場も提供している。

②全国肉用牛経営者会議副会長、島根県繁殖和牛経営者会議会長で中西会長.JPG島根県雲南市の中西康一さんからは、全国と島根県の肉用牛情勢について平成23年から平成27年のデータを用いて説明を頂いた。

 肉用牛の飼養頭数は全国的に減少傾向にあり、期間中に10%程度減少している。また、和牛子牛取引頭数の減少はとりわけ大きく3割程度減少しており、子牛市場の平均価格は同期間で1.7倍までつり上がっている。こうした肉用牛生産頭数の減少などから、枝肉の市場価格も1.5倍に上昇している。島根県もほぼ全国と同様の状況であり、高値で取引されることは生産者にとってうれしいことであるが、TPPの影響など、今後どのように情勢が変化していくのか予断を許さない状況にあると危惧した。
 そして、中西さんは「課題は多く、先行きは不透明であるが、日本の和牛は芸術品であり他国の模倣はそうそうできるものではない。和牛ならではのきれいにサシの入った美味しい肉を待っている消費者がいるのだから、みんなで力を合わせて肉用牛経営を頑張っていきたい」と締めくくった。

8日には、現地研修として、薩摩川内市にある(株)萩原人工授精所、霧島市にある姶良中央家畜市場、志布志市にある(有)徳重義種畜場を訪ね、会員相互の意見交換を行った。

 

【現地研修】

①薩摩川内市にある(株)萩原人工授精所(萩原廣宣社長)は、萩原人工授精所.JPG平成26年5月15日に法人化した。市内では唯一、種雄牛を飼養し、人工授精所を経営している。凍結精液は、川薩地域、県内各地をはじめ、北海道から沖縄まで全国各地で活用されている。経営形態は種雄牛6頭、繁殖雌牛35頭、飼料畑3ヘクタール。
 種雄牛では、その増体力で脚光を浴びた「花美千」(はなみち、平成20年9月1日生、父:第1花国、2代祖:美津福、3代祖:糸福)が、枝肉重量は去勢36頭平均で533.6㎏、雌16頭平均で480.0㎏を記録し、去勢平均BMS8.0、雌平均BMS6.6、去勢は5等級率69%と好成績だった。
 圧倒的な脂肪交雑能力で安福久後継牛の代表になった「茂久桜」(しげひさざくら、平成20年10月23日生、父:安福久、2代祖:茂重桜、3代祖:藤桜)は、去勢30頭平均で枝肉重量485.4㎏、ロース芯面積71.4平方㎝、BMS9.3で、5等級率は80%、雌19頭平均では枝肉重量451.2㎏、ロース芯面積67.7平方㎝、BMS8.9、5等級率は84.2%だった。
 また、「梅花平」(うめはなひら、平成22年5月25日生、父:第1花国、2代祖:平茂勝、3代祖:忠福)も注目されている。
 萩原さんは「採精は順調だが、人気があり県外は約1か月待ち」という。
 耕種部門は、水稲1.3ヘクタール、WCS2ヘクタールを栽培している。

 

②姶良中央家畜市場
 霧島市にある姶良中央家畜市場=JAあいら(家畜市場)は、姶良中央家畜市場.JPG空港や九州縦貫道路などの交通アクセスに恵まれ、成牛せり市は広域生体市場として、九州一の取扱頭数を誇っている。霧島市(旧16町)姶良市(旧3町)湧水町(旧2町)管内で、平成27年度は子牛7376頭、成牛8276頭を取り扱っている。家畜市場取扱金額は、同年度76億8000万円である。購買者は県内7割、県外3割となっている。6月8日には、種雄牛27頭の産子のうち去勢子牛が125頭、雌子牛が118頭の計243頭が上場された。「華春福」の割合が49%だった。

 

 

 

 

③志布志市にある(有)徳重義種畜場(徳重義朗社長)は、(有)徳重義種畜場.JPG繁殖から肥育までの一貫経営を行っている。平成14年7月1日に法人化した。種雄牛8頭、繁殖雌牛250頭、肥育牛430頭、種雄牛8頭、飼料畑3ヘクタール、種雄牛「安糸福」(やすいとふく)と「鉄平」(てっぺい)を輩出している。子牛は全頭、ロボット哺育をしている。 安糸福の血縁牛である「桜美知」(さくらみち)が良好な枝肉成績を記録している。桜美知(平成22年6月12日生、父:平茂晴、2代祖:安福165の9、3代祖:糸福)は、去勢12頭平均で枝肉重量509.5㎏、5等級率75%、ロース芯面積62.9平方㎝、BMS8.5、雌16頭平均で枝肉重量432.4㎏、5等級率69%、ロース芯面積57.3平方㎝、BMS8.6という結果を出している。 「忠久勝」(ただひさかつ、平成22年1月30日生、父:勝忠平、2代祖:安福久、3代祖:平茂勝)は、長崎全共の若雄区に出品され、その体型が注目されたもの。去勢25頭平均で枝肉重量529.3㎏、5等級率52%、ロース芯面積63.6平方㎝、BMS7.9、雌12頭平均で枝肉重量456.0㎏、5等級率67%、ロース芯面積58.7平方㎝、BMS7.8である。後継者の徳重祐太朗さんは「飼料の食い込みが良い。ほとんどが1日に10㎏以上食べている」という。